納税者本人と同居していなくても同居特別障害者になる場合がある!?

適用を誤りやすい用語として「同居特別障害者」というが用語があります。

そこで今回は、障害者控除の中の「同居特別障害者」についてみていきたいと思います。

障害者控除の概要

まずは、同居特別障害者の内容の前に、障害者控除の概要についてみていきたいと思います。

障害者控除

障害者控除とは、納税者本人または同一生計配偶者もしくは扶養親族が(特別)障害者である場合には、(特別)障害者1人につき次の金額を所得金額から控除する制度です。

区   分 所得税 住民税
納税者本人 障害者 270,000円 260,000円
特別障害者 400,000円 300,000円
同一生計配偶者または扶養親族 障害者 270,000円 260,000円
特別障害者 同居特別障害者以外 400,000円 300,000円
同居特別障害者 750,000円 530,000円

障害者・特別障害者

障害者であるか、特別障害者であるかにより所得金額から控除する金額が異なりますが、障害者・特別障害者の判定は次のとおりです。

  障害者 特別障害者
精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状況にある方
例)後見登記されている成年被後見人
同左
児童相談所、知的障害者更生相談所、精神保健福祉センターまたは精神保健指定医の判定により知的障害者とされた方
例)療育手帳:B
  愛の手帳:3度または4度
左のうち、重度の知的障害者と判定された方
例)療育手帳:A
  愛の手帳:1度または2度
精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている方 左のうち、障害等級が1級の方
身体障害者手帳に身体上の障害がある者として記載されている方 左のうち、障害の程度が1級または2級の方
戦傷病者手帳の交付を受けている方 左のうち、障害の程度が特別項症から第3項症までの方
原子爆弾被爆者で厚生労働大臣の認定を受けている方 同左
常に就床を要し、複雑な介護を要する方(引き続き6月以上にわたり身体の障害により就床を要し、介護を受けなければ自ら排便等をすることができない程度の状態にあると認められる方) 同左
精神又は身体に障害のある年齢65歳以上の方で、その障害の程度が上記①、②または④に準ずるものとして市町村長等の認定を受けている方 左のうち、その障害の程度が上記①、②または④に準ずるものとして市町村長等の認定を受けている方

上の表で、「同左」として障害者・特別障害者の両方に該当する場合は、特別障害者として控除額を計算します。

同居特別障害者

それでは、本題の同居特別障害者についてみていきたいと思います。

同居特別障害者とは、特別障害者である同一生計配偶者又は扶養親族で、納税者本人、納税者の配偶者または納税者と生計を一にする親族のいずれかとの同居を常況としている方をいいます(所得税法第79条第3項)。

そして、同居特別障害者に該当するための要件は次の2つです。

同居特別障害者の要件
  1.  同一生計配偶者または扶養親族が、特別障害者に該当すること
  2.  ①の方が、納税者本人、納税者の配偶者または納税者と生計を一にする親族のいずれかとの同居を常況としていること

「同居」という言葉から、納税者本人と同居している場合のみ、同居特別障害者に該当すると思われがちです。

しかし、必ずしも納税者本人だけではなく、納税者の配偶者や納税者と生計を一にする親族のいずれかと同居していても、同居特別障害者に該当するという点に注意が必要です。

特別障害者の方が、納税者本人と同居していなくても、納税者と生計を一にする親族と同居していれば同居特別障害者に該当する。

事例

それでは、次の事例の場合、母親はAさんの同居特別障害者に該当するでしょうか?

 事 例 

 Aさんは別居している両親に生活費を仕送りしていて、Aさんと両親は生計を一にしています。
 また、両親はAさんの扶養親族となっていて、母親は特別障害者に該当します。

母親がAさんの同居特別障害者に該当するためには、次の①及び②の2つの要件を満たす必要がありますので検討していきたいと思います。

  1. 同一生計配偶者または扶養親族が、特別障害者に該当すること
  2. ①の方が、納税者本人、納税者の配偶者または納税者と生計を一にする親族のいずれかとの同居を常況としていること

要件①について

母親はAさんの扶養親族であり、かつ、特別障害者に該当しますので、要件①を満たしています。

要件②について

Aさんは、母親と同居していません。

しかしながら、Aさんは、両親に生活費を仕送りし、Aさんと父親は生計を一にしています。

そして、父親(Aさんと生計を一にする親族)と母親は同居していますので要件②も満たしています。

結論

同居特別障害者に該当するための要件①及び②を満たしていますので、母親はAさんの同居特別障害者に該当することになります。

補足

父親が他界して、母親が一人暮らしとなった場合は、同居特別障害者に該当するでしょうか?

この場合、Aさんと生計を一にする親族と母親は同居していないため、要件②を満たさず、母親はAさんの同居特別障害者には該当しないことになります。

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