ふるさと納税などの寄附を妻名義で行った場合も対象になる!?

ふるさと納税などの寄附を、間違って妻名義で行ってしまったという人もいるかと思います。

そこで今回は、本人名義ではなく、妻名義で寄附を行った場合について書いていきます。

国税庁タックスアンサー

国税庁ホームページには、タックスアンサーという、よくある税の質問に対する一般的な回答が掲載されています。

そして、タックスアンサー「No.1150 一定の寄附金を支払ったとき(寄附金控除)Q3 」には「妻名義で寄附した場合」として次のように記載されています。

妻名義で寄附した場合

Q3
専業主婦である私の妻が、寄附を行い、寄附先から妻名義で寄附金の領収書を受領しました。妻は、収入がないため私の配偶者控除の適用対象となっていますが、妻名義で支払った寄附金について、私の確定申告において寄附金控除の適用を受けることができますか。

A3
寄附金控除は、納税義務者である居住者本人又は非居住者本人が各年において、特定寄附金を支出した場合に適用をすることができます。そのため、本人以外が支払った寄附金については、寄附金控除を適用することができません。(所法78)

国税庁ホームページ タックスアンサーNo.1150 一定の寄附金を支払ったとき(寄附金控除)Q3

一見すると、妻名義で寄附した場合には、本人である夫は寄附金控除の適用を一切受けることができないように思えます。

しかしながら、Q3の質問では「妻名義で支払った寄附金」と名義の話をしているにもかかわらず、A3の回答では「本人以外が支払った寄附金」と寄附金の支払者の話をしていて、質問と回答がうまくかみ合っていません。

そのため、 妻名義で寄附した場合に、本人である夫において寄附金控除の適用を受けることができるかどうかは、寄附金の支払者(負担者)が誰であるかを次のように分けて考える必要があります。

  名義 支払者(負担者) 夫の寄附金控除
適用不可
夫(本人)

 そして、A3の回答では「本人以外が支払った寄附金については、寄附金控除を適用することができません。」と記載されていますので、①の妻名義で妻が支払った寄附金については、夫の寄附金控除の対象にならないといえます。

また、②の妻名義で寄附を行ったけれども、夫(本人)が寄附金を支払った場合に、夫の寄附金控除の対象になるのかについては、このタックスアンサーからは読み取れません。

妻名義の寄附を認めた事例

それでは、妻名義で寄附を行ったけれども、夫が寄附金を支払った場合は、夫の寄附金控除の対象になるのでしょうか。

この点、参考になる事例として国税不服審判所の平成25年7月30日裁決があります。

この事例は、次の事実関係から妻名義で行った東日本大震災の義援金3万円について、夫が支払ったものであると認定して夫の寄附金控除を認めたものです。

平成25年7月30日裁決の事実関係
  1. 妻は、東日本大震災の義援金として3万円を日本赤十字社の指定口座に振込み、妻名義の振替払込請求書兼受領証を受け取った。
  2. 夫は①の妻名義の振替払込請求書兼受領証を確定申告書に添付し、寄附金控除の申告を行った。

  3. 妻は、寄附した年分の所得税の確定申告書を提出しておらず、寄附金控除の適用を受けていない。

  4. 妻は、「東日本大災害の義援金として寄付をした3万円は、夫から受け取った金銭である」旨の書面を夫の確定申告後ではあるが国税当局に提出した。

  5. 夫は確定申告後に「妻名義で振込手続をしているものの、夫が支出した金員であるから、義援金の名義を夫としてもらいたい」旨の依頼書面を日本赤十字社に対し送付した。

  6. 日本赤十字社は、⑤の依頼書面等を受けて①の義援金に係る夫名義の受領証を発行した。

この事例から、妻名義で寄附を行ったとしても、夫が寄附金を支払った場合は、夫の寄附金控除の対象になるといえます。

そして、妻名義の寄附について表にまとめますと、次のようになります。

  名義 支払者(負担者) 夫の寄附金控除
適用不可
夫(本人) 適用可

妻名義で寄附してしまった場合

妻名義の寄附であっても、夫が寄附金を支払った場合には、夫の寄附金控除の対象になった事例を紹介しました。

しかしながら、税務署との無用のトラブルを避けるためにも、間違って妻名義で寄附してしまった場合は、寄附先に連絡して夫名義の受領書を発行してもらい、夫名義の受領書を用いて確定申告するのが良いと思います。

本記事の内容の正確性につきましては細心の注意を払っておりますが、その内容を保証するものではありません。また、本記事の内容を信頼したことによって生じた損害につきましても一切の責任を負いかねます。