半島税制・過疎税制について

あまり馴染みのない半島税制・過疎税制についてまとめてみました。
固定資産税など地方税の減免額が大きく、節税につながります。
半島税制
半島税制とは、半島振興地域において機械・装置、建物・附属設備、構築物などの設備投資をした場合に国税・地方税の優遇措置が受けられる税制です。
そして、半島税制は、半島振興法という聞きなれない法律に基づいています。
半島振興法とはどのような法律かといいますと、第1条に法律の目的が記載されていますが、要約すると次のようになります。
三方を海に囲まれ、平地に恵まれず、水資源が乏しい等国土資源の利用の面における制約を受けていることなどから、半島地域の振興を図ることを目的とする
半島税制の具体的な優遇措置は次の法令等で定められています。
-
- 国税の優遇措置 ⇒租税特別措置法
- 地方税の優遇措置⇒各自治体の条例
なお、令和5年度から「半島税制」と「過疎税制」の対象地域が重複している地域は、半島税制よりも優遇措置が大きい「過疎税制」のみが適用されることとなりました。
半島税制の対象者等
半島税制の対象者・対象業種などは、次のようになります。
| 対象者 | 個人 | 法人(資本金) | ||||
| 1,000万円以下 | 1,000万円超 5,000万円以下 |
5,000万円超 1億円以下 |
1億円超 | |||
| 対象となる設備 | 機械・装置、建物・附属設備、構築物 (※ 構築物は、国税のみ) |
|||||
| 取得 態様 |
国税 | 取得等 (取得、製作、建設、改修) |
新設又は増設 | |||
| 地方税 | 新設又は増設 | |||||
| 対象 業種 ・ 取得 価額 |
製造業・旅館 | 500万円以上 | 1,000万円以上 | 2,000万円以上 | ||
| 農林水産物等販売業 ・情報サービス業等 |
500万円以上 | |||||
個人事業者について
国土交通省の冊子(「【令和7~8年度版】半島振興のための国税・地方税の優遇措置について」)では個人事業者について記載していません。
そのため、一見すると優遇措置は法人のみであり、個人事業者は対象外とも見えます。
しかしながら、租税特別措置法第12条第4項第2号において、個人事業者の優遇措置も規定されていますので、個人事業者であっても半島税制の対象となります。
新設又は増設について
設備投資の取得態様について、「取得等」と「新設又は増設」があります。
どのような場合に「新設又は増設」に該当するかについては、租税特別措置法通達45-5(新増設の範囲)が参考になります。
租税特別措置法通達45-5(新増設の範囲)
(2) 既存設備の取替え⼜は更新のために⼯業⽤機械等の取得をした場合で、その取得により⽣産能⼒、処理能⼒等が従前に⽐して相当程度(おおむね30%)以上増加したときにおける当該⼯業⽤機械等のうちその⽣産能⼒、処理能⼒等が増加した部分に係るもの
この通達から、単に設備を取得するだけにとどまらず、その設備により生産能力、処理能力が相当程度増加する場合に「新設又は増設」と評価できるといえます。
半島税制の優遇措置
半島税制の優遇措置は次のとおりです。
なお、地方税の優遇措置については自治体によって異なる場合があります。
そのため、県税の優遇措置は千葉県、市町村税の優遇措置は南房総地域の館山市と鴨川市(旧天津小湊町を除く)を記載しています。
| 対象税制 | 半島税制 | |||
| 対象市町 | 館山市 | 鴨川市 (旧天津小湊町を除く) |
||
| 対象者等 | 上記半島税制の対象者 のとおり |
|||
| 国 税 | 所得税 法人税 |
割増償却(最大5年間適用) 機械・装置 :普通償却限度額の32% 建物・附属設備、構築物:普通償却限度額の48% |
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|
地方税 |
県税 | 不動産取得税 (対象家屋の敷地を含む) |
1/10 | |
| 個人事業税 法人事業税 |
初年度 1/2 第2年度 3/4 第3年度 7/8 |
|||
| 固定資産税 (大規模償却) |
初年度 1/10 第2年度 1/ 4 第3年度 1/ 2 |
|||
| 市町村税 | 固定資産税 (対象家屋の敷地を含む) |
初年度 1/10 第2年度 1/ 4 第3年度 1/ 2 |
||
過疎税制
過疎税制とは、過疎地域において機械・装置、建物・附属設備、構築物などの設備投資をした場合に国税・地方税の優遇措置が受けられる税制です。
そして、過疎税制は、過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法(以下、「過疎法」といいます。)という聞きなれない法律に基づいています。
過疎法とはどのような法律かといいますと、第1条に法律の目的が記載されています。
この法律は、人口の著しい減少等に伴って地域社会における活力が低下し、生産機能及び生活環境の整備等が他の地域に比較して低位にある地域について、総合的かつ計画的な対策を実施するために必要な特別措置を講ずることにより、これらの地域の持続的発展を支援し、もって人材の確保及び育成、雇用機会の拡充、住民福祉の向上、地域格差の是正並びに美しく風格ある国土の形成に寄与することを目的とする。
過疎税制の具体的な優遇措置については、次の法令等で定められています。
-
- 国税の優遇措置 ⇒租税特別措置法
- 地方税の優遇措置⇒各自治体の条例
過疎税制の対象者等
過疎税制の対象者・対象業種などは、次のようになります。
| 対象者 | 個人 | 法人(資本金) | ||||
| 1,000万円以下 | 1,000万円超 5,000万円以下 |
5,000万円超 1億円以下 |
1億円超 | |||
| 対象となる設備 | 機械・装置、建物・附属設備、構築物 (※ 構築物は、国税のみ) |
|||||
| 取得 態様 |
国税 | 取得等 (取得、製作、建設、改修) |
新設又は増設 | |||
| 地方税 | ||||||
| 対象 業種 ・ 取得 価額 |
製造業・旅館 | 500万円以上 | 1,000万円以上 | 2,000万円以上 | ||
| 農林水産物等販売業 ・情報サービス業等 |
500万円以上 | |||||
半島税制の違いとして次のことが挙げられます。
- 資本金5,000万円以下の場合、取得態様が「取得等」でも地方税の優遇措置が受けられる。
- 資本金1,000万円超~1億円以下の場合、半島税制よりも取得価額要件が緩やかである。
過疎税制の優遇措置
過疎税制の優遇措置は次のとおりです。
なお、地方税の優遇措置については自治体によって異なる場合があります。
そのため、県税の優遇措置は千葉県、市町村税の優遇措置は南房総地域の鴨川市(旧天津小湊町)、南房総市および鋸南町を記載しています。
| 対象税制 | 過疎税制 | ||||
| 対象市町 | 鴨川市 (旧天津小湊町) |
南房総市 | 鋸南町 | ||
| 国 税 | 所得税 法人税 |
割増償却(最大5年間適用) 機械・装置普通償却限度額の32% 建物・附属設備、構築物:普通償却限度額の48% |
|||
|
地方税 |
県税 | 不動産取得税 (対象家屋の敷地を含む) |
課税免除 | ||
| 個人事業税 法人事業税 |
課税免除(3年間) | ||||
| 固定資産税 (大規模償却) |
課税免除(3年間) | ||||
| 市町村税 | 固定資産税 (対象家屋の敷地を含む) |
課税免除(3年間) | |||
畜産・水産業に係る優遇措置
過疎税制では、上記設備投資をした場合の優遇措置とは別に、畜産業・水産業を営む個人事業者の個人事業税の課税免除という優遇措置があります。
| 対象者 | 個人 |
| 対象業種 | 畜産業・水産業 |
| 要件 | 個人または同居の親族で事業を行った日数の合計が、当該年における延べ労働日数の1/3超~1/2以下の場合 |
| 優遇措置 | 個人事業税の課税免除 (最初に課税免除等を行った年度から5年度) |
なお、個人または同居の親族で事業を行った日数の合計が、当該年における延べ労働日数の1/2超の場合は、地方税法により元々非課税となっています。
まとめ
南房総地域の半島税制・過疎税制の優遇措置をまとめると、次の表のとおりです。
| 対象税制 | 半島税制 | 過疎税制 | |||||
| 対象市町 | 館山市 | 鴨川市 (旧天津小湊町を除く) |
鴨川市 (旧天津小湊町) |
南房総市 | 鋸南町 | ||
| 対象者等 | 上記半島税制の対象者 のとおり |
上記過疎税制の対象者等 のとおり |
|||||
| 国 税 | 所得税 法人税 |
割増償却(最大5年間適用) 機械・装置 :普通償却限度額の32% 建物・附属設備、構築物:普通償却限度額の48% |
|||||
|
地方税 |
県税 | 不動産取得税 (対象家屋の敷地を含む) |
1/10 | 課税免除 | |||
| 個人事業税 法人事業税 |
初年度 1/2 第2年度 3/4 第3年度 7/8 |
課税免除(3年間) | |||||
| 固定資産税 (大規模償却) |
初年度 1/10 第2年度 1/ 4 第3年度 1/ 2 |
課税免除(3年間) | |||||
| 市町村税 | 固定資産税 (対象家屋の敷地を含む) |
初年度 1/10 第2年度 1/ 4 第3年度 1/ 2 |
課税免除(3年間) | ||||
半島税制は地方税の減額が縮小していくのに対し、過疎税制は3年間課税免除など、過疎税制の優遇措置の方が大きいことが分かります。
参考条文等
(国税)
- 半島振興法第16条
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租税特別措置法第12条第4項第2号、第45条第3項第2号
-
租税特別措置法施行令第6条の3、第28条の9
-
措通45-5(新増設の範囲)
(地方税)
-
半島振興法第17条
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半島振興法第17条の地方税の不均一課税に伴う措置が適用される場合等を定める省令
-
千葉県半島振興対策実施地域県税不均一課税条例
-
館山市半島振興対策実施地域における固定資産税の特例措置に関する条例
-
鴨川市半島振興対策実施地域における固定資産税の不均一課税に関する条例
(国税)
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過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法第23条
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租税特別措置法第12条第4項第1号、第45条第3項第1
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租税特別措置法施行令第6条の3、第28条の9
(地方税)
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過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法第24条
-
過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法第24条の地方税の課税免除又は不均一課税に伴う措置が適用される場合等を定める省令
-
千葉県過疎地域県税課税免除条例
-
鴨川市過疎地域における固定資産税の課税免除に関する条例
-
南房総市過疎地域における固定資産税の課税免除に関する条例
-
鋸南町過疎地域における固定資産税の課税免除に関する条例
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