暗号資産の贈与・相続について

暗号資産を贈与・相続した場合について検討しました。
値上がり益部分に対する相続税・所得税等の合計税率が最高110%となるなど驚きの結果となりました。
また、不動産など譲渡所得の起因となる資産との違いに注意が必要です。
暗号資産を贈与した場合
まずは、暗号資産を贈与した場合の税金の取扱いについて、贈与者と受贈者についてみていきたいと思います。
なお、暗号資産の取扱いのいびつさを強調するため取得価額を0円とし、最高税率のみで計算します。
贈与者について
暗号資産を個人に贈与した場合、贈与者は贈与時の時価で譲渡したものとみなされます(所法40①一、所令87)。
そのため、時価10億円(取得価額0円)の暗号資産を個人に贈与した場合の所得税・住民税は次のようになります。
- 総収入金額10億円 - 取得価額0円 = 雑所得10億円
- 雑所得10億円 × 所得税・住民税率55% = 所得税・住民税5.5億円
そのため、暗号資産を贈与した場合は、みなし譲渡の規定が適用されます。
不動産など譲渡所得の起因となる資産を個人に贈与した場合は、みなし譲渡の規定はありません。
受贈者について
暗号資産の贈与を受けた場合は、贈与税が課されます。
また、贈与を受けた暗号資産を売却した場合には、所得税・住民税が課されます。
そのため、受贈時と売却時の2段階で税金が課されることになります。
贈与を受けたとき
暗号資産の贈与を受けた場合、受贈者には贈与税が課されます。
そのため、時価10億円の暗号資産を贈与を受けた場合、贈与税は次のようになります。
- 贈与税の課税価格10億円 × 贈与税率55% = 贈与税5.5億円
売却したとき
贈与を受けた暗号資産を売却した場合には、所得税・住民税が課されます。
もっとも、売却した暗号資産の取得価額は贈与時の時価となりますので、贈与を受けた時よりも値上がりしていない限り所得税・住民税は発生しません(所法40②一)。
そのため、時価10億円で贈与を受けた暗号資産を、10億円で売却した場合の所得税・住民税は次のようになります。
- 総収入金額10億円 ー 取得価額10億円 = 雑所得0円
- 雑所得0円のため、所得税・住民税0円
贈与時の時価が受贈者の取得価額になります。
不動産など譲渡所得の起因となる資産を個人に贈与した場合は、みなし譲渡の規定はありません。
そのため、受贈者は贈与者の取得価額を引き継ぐことになりますので、ご注意ください。
暗号資産を相続した場合
暗号資産を保有したまま相続が発生した場合の税金の取扱いについて、被相続人と相続人についてみていきたいと思います。
なお、暗号資産の取扱いのいびつさを強調するため取得価額を0円とし、最高税率のみで計算します。
被相続人について
贈与の場合と異なり、暗号資産を保有したまま死亡したとしても、みなし譲渡規定はありません。
そのため、被相続人が時価10億円の暗号資産(取得価額0円)を保有したまま死亡したとしても所得税・住民税はかかりません。
相続人について
暗号資産を相続した場合は、相続税が課されます。
また、相続した暗号資産を売却した場合には、所得税・住民税が課されます。
そのため、相続時と売却時の2段階で税金が課されることになります。
相続したとき
暗号資産を相続した場合、相続人には相続税が課されます。
そのため、時価10億円の暗号資産を相続した場合、相続税は次のようになります。
- 相続税の課税価格10億円 × 相続税率55% = 相続税5.5億円
売却したとき
相続した暗号資産を譲渡した場合には、所得税・住民税が課されます。
そして、売却した暗号資産の取得価額は、被相続人の取得価額を引き継ぐことになります(所令119の6②一)。
そのため、時価10億円(被相続人の取得価額0円)の暗号資産を相続し、10億円で売却した場合の所得税・住民税は次のようになります。
- 総収入金額10億円 ー 取得価額0円 = 雑所得10億円
- 雑所得10億円 × 所得税・住民税率55% = 5.5億円
また、暗号資産の売却は雑所得に該当し、譲渡所得にあたらないため、相続税の取得費加算の適用はありません(措法39)。
仮に事例のように時価10億円(被相続人の取得価額0円)の暗号資産を相続し、10億円で売却した場合
①相続時に相続税の最高税率55%の5.5億円、
②売却時に所得税・住民税の最高税率55%の5.5億円
と値上がり益部分に対する合計税率が110%の11億円となり、相続しない方が有利となってしまいます。
暗号資産の取得価額について
国税庁の暗号資産に関するFAQには取得価額について次のように記載されています。
暗号資産の取得価額は、その取得の方法により、それぞれ次のとおりとされています。
① ②省略
③ 贈与又は遺贈により取得した場合(次の④の場合を除く。)
贈与又は遺贈の時の価額(時価)
④ 相続人に対する死因贈与、相続、包括遺贈又は相続人に対する特定遺贈により取得した場合
被相続人の死亡の時に、その被相続人が暗号資産について選択していた方法により評価した金額(被相続人が死亡時に保有する暗号資産の評価額)
贈与により取得した場合は、③で贈与時の時価が取得価額になることが分かります。
一方、相続した暗号資産を売却した場合の取得価額は、「④(被相続人が死亡時に保有する暗号資産の評価額)」とあるため、一見すると死亡時の時価とも思えます。
しかし、相続した暗号資産を売却した場合の取得価額について、所得税法施行令第119条の6第2項第一号は次のように規定しています。
次の各号に掲げる暗号資産の前項に規定する取得価額は、当該各号に定める金額とする。
一 贈与、相続又は遺贈により取得した暗号資産(法第四十条第一項第一号(棚卸資産の贈与等の場合の総収入金額算入)に掲げる贈与又は遺贈により取得したものを除く。)被相続人の死亡の時において、当該被相続人がその暗号資産につきよるべきものとされていた評価の方法により評価した金額
仮に、死亡時の時価を取得価額とすると、死亡時の時価は「死亡時の暗号資産の保有数量×1単位あたりの時価」となります。
しかし、死亡時の暗号資産の保有数量は、総平均法または移動平均法によっても変わりませんので、死亡時の時価を取得価額とすると、所得税法施行令第119条の6第2項第一号の規定と齟齬が生じることになります。
また、被相続人の取得価額を引き継がずに相続時の時価を取得価額とすると、暗号資産の値上がり益に対する課税が行われなくなってしまいます。
そのため、相続した暗号資産を売却した場合の取得価額は、被相続人の取得価額を引き継ぐということになります。
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